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近年、「リノベーション」「大規模リフォーム」といった言葉を多く見聞きするようになりました。今あるものを大切にするエコロジーの精神を家にも反映させたもので、極力ゴミを出さず、建て替えに近い効果を得るための手段として注目されています。時として増築ならぬ「減築」という方法も採用されますが、二階建てから平屋へのリノベーションがその代表です。
では、平屋へのリノベーションにはどのようなパターンがあるのでしょうか。また、平屋へのリノベーションから得られる“効果”を解説いたします。
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1.平屋住宅のメリット5
平屋には、皆様が思っていらっしゃる以上のメリットがあります。その代表的な例についてご説明いたします。
1-1.各種動線が「水平」で完結
動線とは、設計の段階で、その建物内で人がどう動くかを考えるものです。家事動線といえばキッチンや洗濯機を中心として、炊事や洗濯が完了するまでどこをどう動くのかを考えることを指します。可能な限り効率よく動けるよう、設計に携わる人はじっくりと考えてくれています。
平屋の場合、家事動線を含む家族のすべての動線が「水平」で完結します。中には1階で洗濯を、2階のベランダで物干しをと、重たいものを持って階段を上がっていた方もいらっしゃるでしょう。このような苦労がないのが平屋のよさです。
これは、妊娠やケガ、介護など人生において起こりうる局面で大きな利点となります。限りなくバリアフリーに近い家、それが平屋だからです。
1-2.構造面での強さを保てる
ごく一般的な木造2階建ては、1階部分と2階部分を「くっつけている」構造となります。というのも、木造で用いられる主要な柱は、1本ではありません。2本の柱を縦につないで1本に“仕立てて”いるのです。この点で平屋はまさしく1本柱です。地震や強風でも揺れにくい(傷みにくい)のは、この1本柱のおかげです。
1-3.メンテナンス費用が安く済む
同じ床面積の1階建てと2階建てを比較すると、1階建て(平屋)の方が将来のメンテナンス費用が安く済む可能性が高いものです。というのも、屋根や外壁塗装の大掛かりな手入れの際、足場を組まなくて済む、もしくは組んでも最小限で済むことから、2階建ての家よりも仮設費用・人件費を安く抑えることができるのです。時間がある・DIYが好き、という方で、正しい手順さえ理解できれば、ペンキ塗りを家族で楽しむこともできます。
1-4.どこからでも屋外に避難できる
不幸にして地震や火事などに見舞われたときも、平屋であればどの部屋からも屋外に逃げやすいというのも平屋のメリットです。腰高窓でなく、全開口型の窓を採用していれば、どんなに急いでいても外部への避難は容易です。
特に、親御さんの介護をなさっている、もしくは今後介護が視野に入っているご家族には、大きな利点でしょう。もしも火の手が屋内を“分断”していても、家の外部から親御さんの部屋にアクセスできます。
東日本大震災や熊本地震の報道を見ていて、皆さんが想像されたのは、「自分の家ならばどう逃げるか」「足腰の弱っている人をどう逃がすか」といったことでしょう。どの部屋も敷地に出入りしやすいのが、平屋のよさです。
1-5.家の中で起きるケガを最小限にとどめられる
高齢者であろうと、若年者であろうと、ケガをしてしまう場所は「住宅」「居室」がトップであることはご存知でしょうか(平成28年度版高齢社会白書「高齢者の家庭内事故(図1-2-6-2)」│内閣府)。道路を歩いていてケガをした若年者は9.0%であるに対し、住宅内で事故にあったのは71.4%です。年齢を重ねるごとに外出頻度は減り、自宅内にいることは多くなります。さらに足が自由に動かせなくなったなど、自宅内でケガをする要因は増えていきます。
小さなお子さんであっても条件は同じです。段差につまづいたり、階段から転げ落ちたりと、家の中は意外にも心配の種は多くあります。この点、平屋であれば階段はありませんし、つくり方によっては段差も極限まで減らすことができます。
若年者であろうと高齢者であろうと、ケガした部位やその程度によっては「ある日突然寝たきりに」というケースも考えられなくはありません。特に屋内でのケガが心配な階段がない平屋は、このようなリスクを大幅に低減してくれる家です。
2.快適な平屋住宅にするためのポイント
平屋は、その特性からときに「難しい家」ともいわれます。快適な生活を実現する平屋を手にするには、どのようなことに注意をすればよいのでしょうか。
2-1.十分な敷地
郊外でよく見るタイプの広めの敷地でないと、もしかすると平屋は難しいかもしれません。というのも、隣の家と自宅とが近すぎると、日当たりが悪くなったり、風の通り道が複雑になり、「不快な家」になってしまう可能性があるからです。都心部の狭小な土地で平屋を建てることは、実際問題として無理といわざるを得ません。
2-2.防犯防火のための措置
どの部屋からも避難しやすい家というのは、裏を返せば「どこからでも侵入しやすい家」ともいえます。これを防止するため、踏むと大きな音がする防犯砂利やセンサーライト、防犯カメラなどの設置が必要となります。
また、窓ガラスをペアガラスにする、防犯フィルムを貼ることで、悪さをしようと試みる人物の侵入を手間取らせるという方法があります。手間がかかれば、「ガラスを割ろうとしている間にすぐ気づかれる」と感じ、侵入を試みる悪者は心理的に追い詰められあきらめてくれます。
2-3.プライバシー面での工夫
リビングも寝室も、洗濯物を干す場所もすべて1階部分となってしまう平屋は、プライバシーに配慮したつくりにしなければなりません。開放感を求めるばかりに庭も窓も大きく外部に開いてしまえば、通りや隣家からの視線に堪えない家となってしまうでしょう。
生垣で庭を覆う、大きなシンボルツリーで視線をそらす、フロストガラス(デザインガラス)を採用するなど、外部から覗かれないよう配慮をしましょう。明るさの確保も大事、とお考えの場合は、カーテンではなく縦型のブラインド(バーチカルブラインド)を用いてもよいでしょう。
2-4.トップライトなどを用い暗い部屋を作らない
平屋で家づくりをする際、すべてを南向きにすることはほぼ不可能です。となれば、どうしても北に面してしまう部屋は暗くなってしまいます。このような部屋には、トップライト(屋根につけるガラス窓)を用いたり、一部を樹脂製の屋根瓦にしたりするなどし、日中の明るさを確保する必要がでてきます。
もしもリノベーション(減築含む)で古い屋根をそのまま使用する部屋があれば、太陽光を室内に導き入れるチューブを採用することもできるでしょう。商品名「スカイライトチューブ」などで検索するとその仕組みがわかります。太陽光を“採取”する樹脂性ドームを屋根につけ、そこから取り込んだ太陽の光を狙った室内へ導くため、チューブを設置します。チューブを曲げなくてはならないときも大丈夫です。チューブ内で太陽光が反射しながら室内へ届きます。トップライトや透明瓦とは異なり、熱をほとんど取り込みませんので、夏の暑さで悩むことはありません。
2-5.せっかくなら「完全バリアフリー」に
2階建てないしは3階建ての家を平屋にリノベーションするのであれば、将来を見越して完全バリアフリーに仕立てておくとよいでしょう。せっかく大きなお金を使うのですから、自分たちの終の棲家をイメージし、車椅子での生活も考慮したものにしておくとベストです。
特に重要なのは、バス・トイレの広さ、そして段差をなくすこと、廊下の幅です。これらは自分自身で生活を送るための便利さと同時に、介護が必要になったときに介護者に苦労をかけない工夫でもあります。
ある調査によると、「介護を受けたい場所」として望む場所は、男性で42.2%、女性で30.2%が「自宅で」と答えています。また、「最期を迎えたい場所」は、高齢者のみならず若年層を含めた総数で54.6%となりました(平成28年度版高齢社会白書「介護を受けたい場所(図1-2-3-19)」「最期を迎えたい場所(図1-2-3-20)」│内閣府)。
このことを考えると、今はイメージできなくても、自分の将来のこと、もしも親御さんの世話をしなければならなくなったときのことを考え、リノベーションの際に完全バリアフリーを目指すのもよいものです。
完全バリアフリーとは、だれもが使いやすい便利な家です。介護やケガといったマイナス要因だけでなく、妊婦さんやお子さんにも優しいうれしい家でもあります。もしもリノベーションをするなら、誰もが住みやすい家にすることも検討してみてください。
まとめ
既に住んでいる家から家族が巣立って行って手入れが大変、もしくは気に入った土地に建っている家が広すぎるといった場合、平屋へのリノベーション(減築)という方法で暮らしやすい家にすることができます。ここで覚えておいていただきたいことは以下の4つです。
- 【メリット】動線がすべて水平で完結して便利、メンテナンス費用が安く済む、いざというときどこからでも避難できる、屋内でのケガのリスクを最小限にとどめられる
- 【デメリット】隣家と近すぎると風通しの悪い家になりやすい、防犯・プライバシー面への配慮が必要、明るさ確保のための設備が必要なことも
- 【将来性】水平移動で生活ができるのは、バリアフリーの家に近づくということ。将来を見越した家の手入れ法として、平屋へのリノベーションは有利な点も多い
- 【介護のために】バス・トイレ、廊下を広くし、段差を取り払う。「終の棲家」を意識して車椅子生活に対応できる家にしておくのもよい
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