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※この記事は「ユウキ法律事務所様」による専門家監修記事です
家を建てる・取得するということは、その土地に根付いた暮らしをスタートさせることを意味します。土地や建物を気に入ったという理由だけで、その後安泰に暮らせるわけではありません。というのも、「ご近所さん」との関係によって、家族の安心が脅かされることもないとは言い切れないからです。日本の国土は狭く、人口密度が高いため、ご近所との関係が悪化することもあります。近隣トラブルの代表的なものと、その解決法、過去の事例などを解説いたします。
また、解説に入るまでに失敗しない家づくりで1番重要な事をお伝えします。
「夢のマイホーム」の実現に向けて、多くの人が住宅展示場を訪れたり、雑誌やウェブサイトで情報を集めたりします。
しかし、その一方で、家づくりを始める前に「知っておくべきだった…」と後悔する人が後を絶ちません。
理想の家を建てるためには、情報収集が最も重要と言っても過言ではありません。
しっかりと情報収集を行わずに安易に住宅メーカーを決めてしまった結果、取り返しのつかない後悔をしてしまう方は非常に多いです。
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家づくりは、多くの人にとって、人生で一度きりの大きなイベント。
だからこそ、後悔のない家づくりを実現するために、まずは情報収集から始めてみましょう!
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それでは解説をしていきます。
1.近隣トラブルの現状
法律に関するある企業の調査によると、調査対象の約43%が「近隣トラブルに遭ったことがある」と回答しています(4割の人が経験している「近隣トラブル」。その具体的な事例を紹介│日本法規情報株式会社(PRTimes掲載))。その内訳は、
- 騒音―31%
- ペットの排泄物や鳴き声―15%
- 違法駐車―13%
- ゴミの不法投棄―10%
- 境界線の問題―9%
- 理由が分からないが難癖をつける人がいる―8%
- タバコの煙・ポイ捨て―7%
となっています。
騒音に関しては「想定できる」とお思いの方も多いでしょうが、近年のペットブームの影響があってか、ペット関連のトラブルが2位に挙がっています。上記の中で一番納得がいかないのは「理由が分からないが難癖をつける人がいる」、ではないでしょうか。理由さえ分かればこちらも対処ができるのに…そんな悲鳴にも似た嘆きが想像できます。
2.近隣トラブルがあった場合、どのような手順で対処すべき?
もしも何らかの近隣トラブルに遭遇した場合、解消へ向けてどのように行動すべきなのでしょうか。手順や注意点は以下のとおりです。
2-1.賃貸物件なら管理会社へ報告・相談
今現在の住まいが賃貸物件(マンション・アパート)ならば、管理会社がついているはずです。管理会社へ困っている事柄と、それが起こった日時、状況を連絡してください。1、2度のことであれば屋根をともにしている者同士、「お互い様」の部分はありますが、あまりにも長期にわたって起こる事柄であれば、その状況・日時をメモしておき連絡をします。必要に応じて対象者への連絡や注意をしてくれるはずですが、「逆恨みが怖い」というときは、匿名での相談として取り扱ってもらえるようお願いをしてみてください。
集合住宅の騒音問題は、意外にも設備トラブル(水道管のウォーターハンマー現象など)であることも珍しくはありません。そういった意味でも、まず管理会社に相談するのがよいのです。
もしも管理会社がついていない物件であれば、大家さんへ報告します。
2-2.面識のある相手なら“直談判”
生活の中で顔を合わせることのある間柄、挨拶を交わしたことのある相手ならば、直接伝えることもできるでしょう。しかしながら、騒音など自分自身で気づいていないことを注意されると「本当だろうか」といぶかしく思う人もいますので、「楽器を演奏したい気持ちはわかりますが…どうしても眠れないのです。こんなとき、あなたもお困りになりませんか」と質問形式で投げかけるのがベストです。
その場では理解をしてもらえなくとも、それ以降は気をつけてくれるはずです。
ただし、たとえ面識があるとはいえ、今後の近所関係を考えると、やはり、まずは管理会社や大家さんを通じて改善を図る努力をしたほうが無難といえます。
2-3.戸建てなら、自治会へ相談
騒音など、自分の家だけでなく他の家へも影響がありそうな事柄なら、自治会への相談も有効です。「近隣で騒音問題が起こっているようです」という旨の回覧物を作成してもらったり、ご近所へ投函してもらうなど、間接的に気づいてもらう方法をとりましょう。このときは、「誰が」「誰の音で」をあいまいにした表現を採用してもらい、角が立たないよう工夫するのが最善です。
2-4.役所への相談
近隣トラブルは、騒音のみならず、悪臭やゴミの問題もあります。管理会社・大家さん、直接の話し合いなど、上記の方法を試しても一向に改善されないようならば、役所への相談も可能です。
騒音やゴミ、ニオイの問題ならば環境にまつわる部署へ。当事者同士が話し合うのを避けることができますし、地域の問題として取り扱ってくれるケースもありますので安心です。役所は、このような相談事を取り扱うのに慣れていますので、アドバイスを得ることもできるでしょう。
2-5.法律家へ相談
上記の方法いくつかを試しても問題解決に至らない場合、弁護士などの法律家に相談することをおすすめします。警察署のように事件として取り扱うのではなく、あくまで当事者間での話し合いとして進めてくれますので、ご近所を巻き込んでの「大事」にせずに済みます。
3.近隣トラブルで警察が動いてくれるケース、動いてくれないケースの代表例
身の危険を感じるほどの問題であれば、警察署に相談しておくよいでしょう。では、警察署へ相談したときに、対応してくれるのか・してくれないのかは、次のようになります。
3-1.警察署が動いてくれるケース
不審者の発見やご近所さんの行動がことのほか異常な場合は、警察へ相談します。このときも、上記のとおり、「いつ」「どこで」「だれが」「何を」を記録しておくとよいです。
3-1-1.不審者情報の提供
あなた自身やお子さんなど、不審者につけられたことがあるような場合は、その状況を日時・場所等できる限り具体的に記録し、警察へ情報提供します。同じ地域で同様の情報があれば、戸別訪問で事情を聞いてくれたり、パトロールの頻度を上げてくれたりする場合もあります。
3-1-2.特定の家(家族)を対象にした嫌がらせ
自宅にゴミや汚物を投げ込んでくるなどの嫌がらせに関する「証拠」を入手しましょう。防犯カメラを設置する、自ら写真を撮る、不在時なら必要に応じて探偵に写真・日時をつかんでもらうなど、客観的証拠があれば、警察も対応しやすくなります。
大切なのは、証拠の確保です。そして、それがどれだけ自分たちの生活に悪影響を与えているか説明できれば、警察も動きやすくなります。
3-2.動いてくれないケース
警察署は、毎日多くの事件を取り扱っています。また、内容によっては「事件」として取り扱えないものもあり、全ての相談案件に、具体的措置を講じられるわけではありません。例えば、警察が動きにくい事案は以下のとおりです。
3-2-1.噂話による名誉毀損
「ご近所あるある」のひとつに、噂話があります。しかしながら、この噂話はどこから発生したものかを突き止めることが困難です。たとえ、噂の出所を突き止められても、「私はそんなことは言っていない」と逃げられてしまうでしょう。
証拠がないか、証拠の乏しい噂話の場合は、名誉毀損として取り扱うことが困難です。また、証拠上、明らかに名誉毀損だとしても、多くの事件を扱っていることもあり、必ずしも警察が対応してくれるとは限りません。
3-2-2.赤ちゃんの泣き声
私たちが生まれてきて今に至るまで、「一切泣いたことはありません」という人はいません。赤ちゃんが泣くのは当然だからです。いくらご近所の赤ちゃんの鳴き声がうるさいからといっても、普通警察は動いてはくれません。
むしろ、ぐずり泣きをしやすい赤ちゃんの親御さんは「ご近所に申し訳ない」と思いながら暮らしているものでしょう。自分の子どもの頃のこと、またはこれから自分に授かるかもしれない子どものことを考え、少しだけ気持ちを広く持ってあげてください。
一方、赤ちゃんへの虐待が疑われるとき、DVが疑われるときは通報してあげてください。
4.警察では解決できなかった場合、近隣トラブルを弁護士に相談するには?
警察への通報でも近隣トラブルが解決しなかった場合は、どうすればよいのでしょうか。弁護士への相談までのステップをご紹介します。
4-1.法テラスや自治体、弁護士会等へ相談
近隣トラブルに強い弁護士を探し当てることが難しい、と思われたのならば、例えば法テラス、自治体、弁護士会などの法律相談を利用したり、インターネットで不動産事件に強い弁護士を探すなどしてください。弁護士といっても、得意・不得意の分野があります。弁護士を紹介してもらうためにも是非利用してください。
4-2.相談費用
有料相談の場合、弁護士への相談は、1時間あたり1万円が相場です。その後、実際に弁護士に事件を依頼する場合、一般的には着手金等の弁護士報酬が必要となります。
4-3.弁護士の選び方
先にも触れたとおり、例えば法テラス、弁護士会などから近隣トラブルに強い弁護士を紹介してもらうこともひとつの方法です。また、実際に近隣トラブルに遭遇し、それを解決してもらった方が身近にいるようでしたら、その方に紹介してもらうのもよいでしょう。
5.実際にあった!弁護士への近隣トラブルの相談・解決事例7つ
実際に弁護士に近隣トラブルを相談し、解決された事例をいくつかご紹介します。
5-1.愛知県 Aさん「散歩中に犬に噛まれてケガ、PTSDも」
ご近所を散歩していたAさんは、後ろから近づいてきた飼い犬にふくらはぎを噛まれ、同時に膝を傷めてしまいました。突然噛まれた恐怖と、その犬が狂犬病の予防注射を受けていなかった事実を知ったことから、Aさんは情緒不安定となってしまいました。
この件につき、飼い主は自宅の裏庭を簡単な柵でしか覆っていなかった(トタン板は外れていた)ことなどから、Aさんへの治療費とPTSDによる逸失利益の一部、慰謝料、弁護士費用相当の損害につき約800万円の支払いを命じられました(平成13(ワ)365損害賠償請求│名古屋地方裁判所)。
5-2.福岡県 Gさん「ご近所さんが野良猫を餌付け、糞尿のニオイで困った」
Gさんのご近所さんは、自宅敷地内の庭に野良猫用の寝床や餌を用意し、それを目当てに猫が集まってくるようになりました。親猫と子猫の合計4匹が集まるようになり、その猫たちがGさん宅の庭にも出入りし始めたため、糞尿のニオイに困ってしまいました。
Gさんは自宅を囲うようにネットを張ったりと自衛行動を取り、それに加えご近所さんに困っている旨の文書をポストに入れ伝え、自治会長にも相談、市役所にも指導を要望しました。ご近所さんは保険所職員から指導も受けましたが、うまく伝わっていない現状に困り、Gさんは裁判所に訴え出ました。
結果として、そのご近所さんにはGさんの精神的な苦痛に対し、50万円の支払いを命じられました(平成26(ワ)1961損害賠償請求事件│福岡地方裁判所)。
5-3.奈良県 Jさん「隣家からラジオやアラームが大音量で…」
一年半もの間、隣家から連日連夜ラジオや目覚ましアラームを大音量で鳴らし続けられたため慢性頭痛や耳鳴り、睡眠障害に陥ったJさん。調査によるところ、最大音量は79デシベル(地下鉄や電車の車内とほぼ同等)でした。
この行為は、Jさんの睡眠を奪い精神的ストレスを生じさせて身体を蝕むものとみなされ、傷害罪に相当すると判断されました。被告は懲役1年を命じられました(平成15(わ)570傷害被告事件│奈良地方裁判所)。
5-4.東京都 Aさん「お隣の敷地の樹木や落ち葉が塀を越えてこちらへ…」
Aさんは、お隣との間にある壁を樹木が越えてきていることに気づきました。そして段々日当たりが悪くなったり、落ち葉が自宅の庭に舞い落ちてくることに困り、お隣の家の持ち主に「剪定して欲しい」と申し出ました。
しかしながらお隣さんは「勝手にどうぞ」といっただけで何もしてくれません。そうしている間にも、Aさんの建物の壁や窓に触れ、傷まで付いてしまうことに腹立たしく思い、自分自身で剪定をしていました。
あまりの不親切さに、Aさんは裁判に訴えることにしました。裁判では、ヤフー地図やGoogleマップで枝の一部のかぶさりも確認され、壁や雨どい、アルミサッシの汚れ・傷の20%程度はこの樹木の影響であることが認められました。
お隣さん(被告)にはAさんにおよそ40万円を支払うよう命じられました。
5-5.東京都 Gさん「夜中に上階の子どもが跳んだり跳ねたり…」
マンションを購入して住み始めたGさんは、居住開始後8年ほどたった頃から、上階の足音に悩まされ始めました。静けさが特徴の第1種中高層住居専用地域にあったマンションでしたので、Gさんはその音が不快でなりませんでした。
時には深夜にも聞こえ、辛かったGさんは眠れず、マンションの管理組合に相談。「子どもが室内を走り回ったりする音に注意するように」との文書を配布してもらいましたが、最終的に被告となった子を持つ世帯は、「Gさんが天井を突いた」と非難する文書をGさんのポストへ投函してきました。
話し合いの場を持ったものの、「これ以上静かにすることはできない、文句があるなら建物に言え」と反論、解決できなかったため、裁判沙汰となってしまいました。
調査の結果、その音が50~65デシベル(掃除機の音に相当、うるさいレベル)とされたため、被告には慰謝料30万円と弁護士費用6万円の賠償が命じられ、その後被告は引越していきました(平成17(ワ)24743号損害賠償請求事件│一般社団法人マンション管理業協会)。
5-6.岡山県 Jさん「祈祷所の騒音が10年も、持病の悪化や暴力に耐えられず」
J夫婦の近隣に設けられた祈祷所では、10年ほど前から朝晩問わず読経や太鼓、ほら貝の音がし始めました。J夫婦のみならず、ご近所の人たちも騒音として感じていて、町内会長を通じ注意してもらいました。しかしながら祈祷所の持ち主は逆に被害者意識を持ってしまいました。
J夫婦の奥さんは睡眠不足となり、持病の高血圧症などが悪化。ある日、J夫婦の旦那さんが祈祷所の所有者に「静かにして欲しい」と申し入れると、J夫婦の旦那さんに棒状のものを投げつけたり転倒させたりし、ケガをさせてしまいました。
裁判所ではこれらを総合的に判断し、被告(祈祷所所有者)に、J夫婦の夫に対し、治療費、入通院慰謝料、後遺障害慰謝料や転居に伴う損害、弁護士費用損害の計およそ577万円のほか、騒音被害による慰謝料25万円、妻に対し、騒音で既往症が悪化したこと、夫が暴力を振るわれたことで妻が被った精神的苦痛なども勘案し、慰謝料150万円の支払を命じました(平成12(ワ)1052損害賠償請求│岡山地方裁判所)。
5-7.東京都 Iさん「マンション工事で眠れず、個人タクシーの売り上げが激減」
賃貸アパート(住居地域エリア)に住まいながら、個人タクシー運転手として深夜に働いているIさん。隣接した土地で始まったマンション建設工事により眠れなくなり、月収が大幅に落ち込んでしまいました。
そのマンションとIさんが住むアパートの距離はたった50センチ。工事が始まる時間を朝8時からではなく10時からにして欲しい、工事中の仮住まいの場所を用意して欲しいなどといった要望をマンションの施主に内容証明郵便で送りました。
協議の場も設けられましたが話し合いはうまく進まず、Iさんは最終的に騒音による慰謝料の支払を求めて、施主を訴えました。
裁判所では、朝8時から始まる工事では、常時概ね60デシベル、時に80~90デシベルの騒音が発生していたとの認定事実を前提として、東京都公害防止条例で、午前8時から午後5時までは50デシベルを超える騒音発生を禁止されていることから、本件騒音がIさんの就寝を妨げ、午前8時以降、相当程度睡眠妨害されていたと評価しました。
その上で、Iさんから苦情を言われるまで、施主がIさんの被害を軽減する措置を講じないで放置していたこと、防音シートの効果は期待できなかったこと、Iさんが当時60歳で、加齢による身体の衰えもあって、騒音による睡眠妨害が身体に多大な影響を与える状況であったこと、住居地域とはいえ、環状八号線付近のため暗騒音50デシベル程度であったこと、深夜業に伴う生活形態がIさんの自主的判断によるものであること、施主から工事期間中の代替住居が提案されたにもかかわらずIさんが当初拒否した経緯などの事情を総合判断し、受忍限度を超えていたとしました。
結果として、被告(マンションの施主)はIさんへ30万円の支払いをするよう命じられました(マンション建設による騒音被害でタクシー運転手への慰謝料が認められた事件│日本騒音調査ソーチョー)。
まとめ
近隣トラブルは、小さなことから、裁判にまで発展する深刻なものまで幅広く存在します。ここで覚えておきたいのは、以下の5つのことです。
- 近隣トラブルは、騒音、ペット関連、違法駐車、ゴミの不法投棄、境界線問題、理由のわからない難癖、タバコの順に多い
- 近隣トラブルが起きたら、管理会社や大家さん、自治会(町内会)や役所への相談を。それでも解決しなければ法律家へ
- 警察はすべての問題を解決できない。しかしながら不審者情報や特定の家への嫌がらせなど、実際の被害につながりそうなことならば証拠をとり相談を
- 弁護士に相談したいときは、例えば法テラス、自治体、弁護士会などの法律相談へ。近隣トラブルに強い弁護士を紹介してもらい、まずは相談し、見通しを立てる。
- 犬にかまれた、大音量の迷惑行為、あからさまな嫌がらせ、近隣の工事による健康被害など、裁判によって決着をつけた近隣トラブルも少なくない
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