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※この記事は「伊藤憲吾様」による専門家監修記事です
親御さんが長く住んだ家、つまり実家が空き家になってはいませんか。残念ながら親御さんが亡くなった、もしくは他の土地に新しく家を建てたなどの理由で空いてしまった実家はどうなさいますか。
空き家の存在に頭を悩ませているのは、実はあなただけではありません。国もまた、様々な面で問題視しています。
空き家にまつわる問題と、考えうる解決策について解説します。
また、解説に入るまでに失敗しない家づくりで1番重要な事をお伝えします。
「夢のマイホーム」の実現に向けて、多くの人が住宅展示場を訪れたり、雑誌やウェブサイトで情報を集めたりします。
しかし、その一方で、家づくりを始める前に「知っておくべきだった…」と後悔する人が後を絶ちません。
理想の家を建てるためには、情報収集が最も重要と言っても過言ではありません。
しっかりと情報収集を行わずに安易に住宅メーカーを決めてしまった結果、取り返しのつかない後悔をしてしまう方は非常に多いです。
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家づくりは、多くの人にとって、人生で一度きりの大きなイベント。
だからこそ、後悔のない家づくりを実現するために、まずは情報収集から始めてみましょう!
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それでは解説をしていきます。
1.実家を空き家にしておくことで生じる問題3つ
誰も住まなくなった実家を、空き家のままにしておくことは「得策」とはいえません。将来的にいくつかの面で問題となる可能性があるからです。考えられる問題は大まかに以下のとおりです。
1-1.固定資産税の問題
ご存じのとおり、土地や建物には固定資産税がかけられます。土地に住宅が建っている場合、「住宅用地の特例」が適用され、概ねの場合、更地の6分の1になっています。
- 更地=課税標準額に1.4%を乗じた額
- 小規模住宅(200平方メートル未満)=課税標準額×6分の1×1.4%
- 一般住宅(200平方メートル以上)=課税標準額×3分の1×1.4%
課税標準額は自治体により異なりますが、税額を求めるとき、上記のような計算式となります。
最近話題になっている「特定空き家」についてご存じでしょうか。古くなり倒壊の危険性が生じ、地域の問題にまで発展している家を持つ人に、自治体が何らかの措置をするように求めることができるようになりました。
市町村からの勧告を受けると、その段階で固定資産税は元の額、つまり更地の額に戻ります。これまで6分の1ないしは3分の1であったものが、「家はあるのに更地扱い」となるうえ、解体費用を負担しなければならなくなります。
立ち入り調査を拒んだときは、罰金が課されることもあります(空家等対策の推進に関する特別措置法│電子政府の総合窓口e-Gov)。
1-2.近隣への迷惑問題
先にも少し触れたとおり、放置された空き家は地域の景観を乱します。景観の問題のみならず、ゴミが放り込まれるようになり放火対象になったり、樹木や雑草が生い茂ることから好ましくない虫の発生源になることもあります。ときとして、不審者のたまり場になり地域の治安が悪くなるケースも存在します。
ブロック塀が倒れる、屋根瓦の落下、建物自体が倒壊する、といったことが起きてしまえば、隣家への大きな影響から、物的損害・死傷者を生んでしまうことも考えられます。
あなたが子ども時代をすごした実家が、このような「迷惑な空き家」になり、ときには市町村からの勧告・罰金を受けてしまうことは不本意ではないでしょうか。
1-3.長期間放置している空き家は「自治体の困りごと」につながる
親御さんやご親族が亡くなってからの空き家(つまり、長い間空き家になっている状態の家)には、自治体も困っています。納税義務を含む相続者が誰なのかを追跡するのには、多くの時間や費用が必要です。
最終的には、先に触れた特定空き家と指定し、追跡し切れなかった相続者からの不服申し立てのリスクを背負いながら、致し方なく「所有者不明」とし、自治体の予算から解体費用を捻出することもあるのです。
もしも、親御さんの住んでいたご実家のみならず、ご親戚の遺した家が継ぐ人もなく朽ちているようならば、相続権を持っている方が声を掛け合い、手立てを講じなければなりません。
2.実家が空き家となった場合の活用(対応)方法5つ
では、実家が空き家となってしまった場合、どのように対処すればよいのでしょうか。以下のパターンが考えられます。家の状況・ご家族やご親族の意向によって異なりますので複数の“候補”を挙げておくとよいでしょう。
2-1.誰かが住む
まず、ご家族のうちどなたかが住むことができないかを検討してください。相続する方(ご長男・ご長女)がお住まいになれば、何かのときに集まれる「ふるさと」をご家族・ご親族が失うこともありません。
ご家族の思い出の品を片付けるといった大掛かりな仕事もほとんど必要ありませんし、ご先祖様とつながっておくためのお仏壇の心配もありません。
空き家となった家にお住まいだった方(ご両親)にお子さんがおひとりしかいなければ、事はスムーズです。しかしながら、ごきょうだいが複数人いらっしゃったときには、みなさんの同意のもと、相続の手続きをしなければなりません。
誰が・何を・どのくらい手にするのかを話し合い、それを適正に実行しなければ、後々家族間の問題を引き起こしかねません。納得のいくまで話し合うこと、もしも揉めそうになったときには遺言書がないかを調べたり、相続問題に詳しい司法書士へ相談をし、問題の芽を摘んでおくことをお勧めします。
※相続については、「不動産を相続した場合の名義変更にかかる時間と費用・流れ」も参考になさってください。
2-2.売却する
空き家となった家がまだ「充分に人が住める」状態であれば、土地と家とをまとめて売却することも検討してください。
先に触れたとおり、相続する方が複数人いらっしゃる場合でも、売却したお金を分割すれば気持ちの良い遺産相続となるでしょう。また、家を継いだ方がその後の家の手入れのためにお金を用意するといった負担もありません。
その家から巣立ったお子さんすべてが地元を離れ、就職や結婚をし、既に家を構えているとき、誰も住んでいない空き家をチェック・手入れするためにわざわざ帰省するのは現実的でないケースもあるでしょう。
売却可能な金額が小額であっても、空き家をそのままにしておくリスク回避や、遺産相続での揉め事を避けるために有効な手段であることは間違いありません。
※家を売る方法については、「家を売るには?高く売る方法、後悔しないための注意点を網羅!」も参考になさってください。
2-3.貸し出す
たとえば、リフォームしたばかりの実家が空き家となってしまった場合は、賃貸物件として貸し出しするのもひとつの方法です。リフォームによって資産価値がキープされていますので、借り手も見つけやすい状態です。
では、古さの気になる家が貸し出せないかというと、そういう訳でもありません。ホームインスペクションにより家の強度に直接関係する部分に問題がないと“診断”してもらえれば、借り手が見つかることもあります。
そのとき、「現状復帰を求めない」とし、壁紙の張り替えや床材の上置きなどDIYでできる範囲で借り手が好きに手入れしてもよい、という条件をつけると、借り手を早く見つけることができるでしょう。
しかしながら、リフォームしていない家は、耐震性や断熱性の面で不安が残ります。お金を頂戴しながら他の人に住んでもらう以上、家主としては、住む人の安全性・快適性を求めるべきと考えます。
耐震・断熱リフォームの見積もりを複数社に出してもらい、解体費用と比較し、さほど大きな差がないようであれば、思い切って大家業に取り組むのも空き家対策のひとつです。
2-4.民泊に活用する
空き家を利用した民泊ビジネスも普及しつつあります。自然豊かなエリア、もしくは都市部へのアクセスが良好なエリアにある土地・建物であればそのようなビジネスも成り立つ可能性があります。
しかしながら、つい先ごろまで「民泊は法的グレーゾーンないしはブラック」とされていました。ですが、インバウンド(訪日外国人旅行客のことを指す)の増加に伴い、宿泊施設の不足も広く知られています。
このため、国は、外国人観光客の求める安価な宿泊所のニーズに応えられていない現状を受けて、2017年6月9日に「住宅民泊事業法案」を閣議決定しました(「住宅宿泊事業法案」を閣議決定│官公庁)。
これまでは、お金を対価として受け取り、誰かを泊めるという行為には、旅館業法に基づく簡易宿所免許の取得をしなければなりませんでした。今回のこの法の成立によって、空き家となった実家を民泊に活用できる可能性がでてきました。
条件としては、
- 事業主となる
- 都道府県知事への届出
- 国土交通大臣の登録(家主不在型住宅宿泊事業の場合必要となる)
- 年間180日まで提供可能
- 法に則った宿泊者数の制限
- 安全確保のため非常用照明器具・避難経路の表示
- 周辺住民からの苦情への対処
などが定められています。
空き家となった実家をビジネスに活用できるチャンスが訪れたわけですが、事業主としての働きも求められますので、ウィークデーはお勤めをされていたり、求められる設備への投資が難しいという方には少しハードルが高いかもしれません。
しかしながら、家を相続した方がご実家に住んでいる・もしくはご実家から近くに住んでおり、なおかつリタイヤ後で宿泊者や建物のケアに時間が使えるようならば、老後の収入源として有効な方法でもあります。
また、若い方であっても「いずれは自分で本格的にゲストハウスなどの事業を行いたい」と考えている方にとっては、有益なチャレンジ法ともいえるでしょう。まずは、ご実家のある自治体に相談をし、民泊への活用ができるかどうかの相談をなさってください。
さらに、本格的に民泊施設へと“転換”させたいときは、建築基準法に則った「用途変更」を申し出て、建築確認手続きをします。これは、これまで一般住宅という用途だった空き家を他の用途(今回は民泊)へ変えることを公的に認めてもらうため、敷地面積が100平方メートルを超えるときに必要となる手続きです。
民泊のみならず、カフェや事務所などに変えることができれば、まちの活性化の一助になったり、雇用を生み出したりすることができるかもしれません。しかしながら、都市計画法(健全な環境を保つためにどこで・どのような建物を建てるのかを定める法)により商業施設にできないエリアもあります。このことを正しく理解・判断するため、建築士に一度相談することをお勧めします。
2-5.解体する
もしも、上記の「ご家族が住む」、「賃貸として貸し出す」、「民泊に活用する」が現実的でない場合は、家を解体し更地にすることが唯一の選択肢となるでしょう。
空き家をそのまま放置していれば、いずれ「特定空き家」とみなされて固定資産税も元通りになってしまいます。その上、自治体から是正勧告を受けた後に解体費用を負担するなど、「実家が白い目で見られる」というリスクも付きまといます。
このような残念な結果を招く前に、家を解体し、近隣へ迷惑をかけないようにするのがベストな道です。いずれ解体しなければならないのであれば、ご自分の判断で早めに更地にし、誰にも迷惑をかけないようにするほうがよいでしょう。
まさかの倒壊により、隣家や通行人へ損害を与えたことによる金銭的手当て・心理的ストレスなど、先々までを考えると、費用をかけて更地にすることが一番の「安全策」です。特に空き家となった実家を見守ることのできない遠方にお住まいの場合は、ベストなのではないでしょうか。
土地を売却するにしても、手の施しようのない家が残っているより、更地のほうがはるかに売りやすいものです。
家の解体の費用目安は、
- 木造30坪(2階建て)=おおむね120万円
- 木造50坪(2階建て)=おおむね180万円
- 木造100坪(平屋)=おおむね300万円
です。
今、「終活(自分の死や死後にまつわる計画)」という言葉が流行していますが、「家のお葬式代」も必要、ということです。
しかしながら、壊すにはもったいない家があることも事実です。単に「誰も住まないから」といった理由で解体するのであれば、古民家のリフォーム・リノベーションに長けた建築士に一声かけていただけないでしょうか。
良い家には、良い木材が使われています。味わいのある建具部品などもあります。もしも他に古い家のリフォームを考えている方がいるなら、今まさに解体しようとしている家の材料を求めている可能性もあります。
もしもそこで古材とお金のやり取りが発生すれば、解体費用の一部をカバーできるかもしれません。さらには、環境問題の面からもとても有益です。家の所有者にとっても、「自分の家はなくなったけれど、古材はあの家で生きている」という気持ちのよりどころができることでしょう。
※家の解体の詳細については、「家の解体工事費用相場と業者の選び方」もご参考になさってください。
まとめ
実家が空き家になってしまうことは、とても寂しいことです。特に既に他の場所で家を構え、なかなか実家の“面倒”を見られない場合、家は傷むスピードが増してしまいます。
そのような状況は、様々な面で問題を生むことになってしまいます。今回ご記憶いただきたいのは、以下の6つのポイントです。
- 空き家を放置すると、様々な問題が起こる。特定空き家とされ固定資産税が更地扱いになる・近隣へ迷惑をかけるなど
- ご家族の誰かが住む、もしくは思い切って売却することが問題回避の手がかりとなる。遺産相続の問題へ発展しそうなら、売却して得たお金を分配する
- 特定空き家の問題は深刻。実家が空き家になり、その家の手入れができない場所にご家族が住んでいる場合は、倒壊・治安の悪化を引き起こすなど問題が大きくなりがち
- 空き家がまだ住める状態なら、賃貸物件として貸し出すのもひとつの方法。特にリフォーム済み、ないしは「現状復帰義務なし」条件をつけた物件は借り手を見つけやすい傾向
- 空き家を民泊にすることも視野に入れる。個人事業主となり自ら運営する、もしくは運営会社に任せるという方法がある
- 対策が見出せないときは、思い切って更地にして売却。解体費用はかかるものの、倒壊などで迷惑をかける心配が解消される
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